このコラムでは、元電機連合 書記長、元東芝労働組合 中央執行委員長、
東芝グループ連合初代会長として、長年にわたり労働組合の現場と向き合ってきた泉田和洋が、自身の経験をもとに、今の組合役員や組合員と一緒に考えていきたいことを綴ります。
1.「労使関係の在り方について」
戦後からの労使関係の流れを振り返りますと、戦後間もなくは一部の過激思想を持った労働運動家による先導の影響を受け、「敵対的労使関係」にあったことが伺えます。その後、労働運動の民主化が進められ、「労使対等・事前協議」を理念とした労働運動が定着していく中で、「労使は車の両輪、あるいは、鏡である」との例え(考え)が広く浸透していったように思います。
私は、「車の両輪」の例えからは、「両輪は、近づき過ぎても、離れ過ぎてもその役割が果たせない」ということから、「労使関係においては、適度な距離間を保ちながら話し合い(折衝・協議・交渉)に臨むことが大切である。従って、会社とべったりのものわかりが良すぎる労働組合、距離を置き過ぎて何事にも反対する労働組合であっては、労働組合の役割は果たせない」ということを学びました。
また、「鏡」の例えからは、「労使関係においては、相手の存在を認め合う中で切磋琢磨をしながらともに成長を図るという姿勢を持つことが大切である。従って、会社が勉強すれば、組合も勉強する。組合が勉強すれば会社も勉強するといったお互いの姿勢がお互いの成長につながる」ということを組合役員としての実践を通じて学びました。
このような経過と経験を踏まえて、近年の労使関係を見てみると、労使の間では厳しいやり取りがあること、また、会社の提案等に対しては是々非々の立場で臨むことを前提としながら、「運命共同体としての労使を支える建設的労使関係や協働的労使関係」を標榜する労働組合が増えてきているように感じます。労使が力を合わせて現下の変化の時代を乗り切っていくためには、この「建設的労使関係や協働的労使関係」は時宜を得たものと思います。
2.「労働組合の会社との向き合い方」
「労働組合の会社との向き合い方」をどうしていくかということは、労働組合が、日常折衝、労使協議、労使交渉において向き合う会社の人事・勤労部門の担当者・主任・課長・部長、そして、労働担当役員の皆さんとどう向き合っていくかということになると思います。
私が組合役員時代に、この「会社とどう向き合うか」を考える中で強く意識したのは、これらの皆さんと、できるだけ良好な人間関係・信頼関係を築くということでした。
そのために、まず、心がけたことは、「労働組合が向き合う会社の皆さんの立場や存在価値を認めたうえで(向き合う会社の皆さんは、会社側にスタンスをおいて会社の考え方を労働組合に伝え、その考え方について理解を求める、あるいは、理解を得るという役割=使命を担っているということを認めたうえで)話し合いに臨む」ということでした。
その理由は、「労働条件の改善充実・経営対策の強化・福利厚生制度の改善充実」等の実現に向けた労働組合の機能を十分に発揮していくためには、私たち労働組合が向き合う皆さんとの間にできるだけ良好な人間関係・信頼関係を築くことで、本音の話し合いができる状況を作ることが重要なポイント(近道)だと考えたからです。
話し合いの中では、私たち労働組合の考え方に前向きに理解を示してくれる方がおられる一方、なかなか理解を示してくれない方も見受けられましたが、この場合でも、その方の立場や存在価値を認めたうえで、辛抱強く労働組合の考え方に理解を求める努力を続けました。この努力は、最終的には労働組合としての機能の発揮に大きくつながりました。
個別労使における「労使関係の在り方や会社との向き合い方」は、それぞれの労使の歴史の中で培われてきているものでもあるだけに、これがベストだという言い方はできませんが、労使関係が人と人で成り立っていることを考えれば、できるだけ良好な人間関係・信頼関係を築くことは、途中、労使の考えが対立してもめる事態になっても、最終的には本音の話し合いを通して、労使にとってプラスとなる方向性を導き出していくことを可能にしてくれるものと考えます。
問いかけをいただいた役員の方には、以上のような内容をお伝えし、「労働組合ならびにその活動(取り組み)は、憲法ならびに労働組合法により認められているものであることも踏まえ、組合員の皆さんの代表として、会社とは自信を持って堂々と向き合い、労働組合の役割を果たしていってください」とお願いしました。
相手の立場や存在価値を認めたうえで話し合いに臨むことは、労使関係だけでなく、日常のもの事を円滑に進める上でも大事にしなければならないことかもしれませんね。
頑張って参りましょう!
この記事を書いた人
泉田 和洋
Kazuhiro Izumida
j.union株式会社 顧問
元電機連合 書記長
元東芝労働組合 中央執行委員長
東芝グループ連合 初代会長
元株式会社コンポーズ・ユニ代表取締役社長

