年のリーマン・ショック以降、続く世界的な金融危機は日本を未曾有の円高に追い込み、輸出産業で成り立ってきた日本の産業構造に激震を起こしています。そこに、年東日本大震災も重なって「国難」といわれる状況に至っています。さらに、進むグローバル経済と技術の革新は、資本の海外移転を促進させるだけでなく、国内における熟練労働者の存在を無意味化させ、創造的な企画の仕事とそれを伝達する技術者(正社員)以外は、伝達された操作マニュアルに従っていさえすればよい、熟練を要しない単純労働者(非正規社員)、という二極化を進行させつつあります。市場原理にもとづいた企業経営を必然としていると、未来はますます不安で希望を持てなくなり、社会はニヒリズムに覆われてしまうのではないかと心配になります。 今日こそ、社会・経済・企業が人間に奉仕する組織として機能する、連合ビジョンの表現を借りるならば「働くことを軸とする安心社会」へと再構築していくことが求められる時代はありません。現代社会こそ、新しい教養と新しい秩序、信念が求められているのです。現代社会は企業社会です。「働くことを軸とする安心社会」を作り出すには、私たちは「働くことを軸とする安心企業」を作り出すことから始めなければなりません。企業の全ての構成員たる個々人が、それぞれに機能し、企業内において役割と地位を得て、組織の一員として機能し、評価される存在になることが求められています。 一方、資本主義の市場原理がもたらす荒廃を社会主義によって克服する、という考え方がかつては存在し、それを夢・希望にして組合活動が「労働運動」として展開されてきました。しかし、その夢・希望は実現されることはありませんでした。登場した社会主義体制には、人々の平等も自由もないこと、階級のない社会どころか一層厳しい階級社会になってしまうことが明らかとなり、崩壊の道を歩むことになりました。そして、社会主義経済体制の原理としてのマルクス主義は教義としての力を失い、資本主義社会内部で展開されていた労働運動もビジョンを失いました。はじめにはじめに
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