労使交渉・協議の進め方
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しかしいまだに、労使関係は労働者と経営者・管理職との「力関係」であるととらえて、今日の労働組合が成果を上げられないのは「闘わなくなったからだ」「物分りがよすぎるからだ」という人達がいます。これらの意見が生まれるのは物の見方・考え方が、いまだマルクス主義に規定されているためなのですが、おかしなことには、マルクスを読んだことすらないのにマルクス経済学を語る現象が生まれています。 今求められていることは、市場原理の経営の矛盾は、生産手段を私的所有から社会的所有にすれば解決する、というような単純な話ではなく、また、国家によって規制された経営をもっと緩和して「市場にいる神の手」にゆだねればよいのでもなく、企業という生産手段をどのように運営・コントロールするのか、それを担う企業の利害関係者の責任の取り方です。企業経営の責任の取り方とは、企業経営に関する価値観や知恵のことで、それは企業経営にかかわるリーダーたちに求められる品性の高潔さです。それを・・ドラッカーは「マネジメント」という概念で語っています。企業を構成する全ての人々の良いところを見出し、尊敬し、それを伸長するようにはからうことこそ、リーダーに求められる最大の要件だとしています。これを、経営に関する知識・経験・能力などよりも上位の概念においています。 本書は、企業経営にかかわる労働組合のリーダーに求められる品性の高潔さとは、労使関係に発生する問題の解決を、被害者意識から当事者意識によって、からに問題解決することによって発揮されること。労使関係を階級対立の概念でとらえるのではなく、マーケティング(顧客関係)の概念でとらえて、相手のニーズやウォンツをつかみ、問題解決していくこと。そのための、労使交渉・協議の進め方についての戦略と戦術について述べたものです。 本書が多くの組合役員の方々に読まれ、役員みなさんの労力と貢献が報われることを願うものです。年月西尾 力

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