21世紀の労働組合活動について、一つ確かなことがあります。それは「組合活動におけるマネジメントの導入がさらに大切なものとなり、それが労働組合運動の命運を決するものとなる」ということです。マネジメントについてP・F・ドラッカーは「情報を知識に転化し、知識を行動に具現化することである」と述べています。組合活動において役員に求められるマネジメント力とは、詩人・画家・作曲家などのような特別な才能ではなく、会社の管理者のように特別の地位と権力を有する者のそれでもありません。マネジメントは一つの専門分野であり、それは体系的に研究し、学び、教えることができるものです。「組合活動にマネジメントを導入する」ということは、言い換えれば「組合役員としてのものの見方・考え方を再構築すること」だと言えましょう。具体的に言えば、それはまず、21世紀の組合活動の定義を、労働組合法第二条に定義された「労働条件の維持・改善ならびに経済的地位向上」という狭い領域に労働組合の活動を押し込めるのではなく、次の3つの使命を持った集団および活動と再定義しなおすことです。1.自分たちの所属する会社を“よい会社”にする2.“労働者の集団”から“プロフェッショナルの集団”を目指す3.集団および個別の労使関係において、マネジメントで労使対等を実現し、労使関係上に発生する問題を解決するこれら3つの単純明快な目的によって人が結集できるようにすることです。「組合活動にマネジメントを導入する」ということの第二の意味は、組織と人との関係に関する分析手法に、両面思考(SWOT分析)を取り入れるということです。すなわち、労働組合の内部環境を強み(Strength)と弱み(Weakness)、外部環境を機会(Opportunity)と脅威(Threat)の両面から情勢分析を行い、組織と人の強みに着目しつつ、それを機会と結びつけて、弱みや脅威を無意味なものとすることで、人が共同して成果を上げられるようにすることです。第三に、組合役員に求められるマネジメントとは、労働組合という組織と、それを構成する組合役員と組合員の成長を成し遂げることです。そのために、そこにいる組合役員と組合員の意思の疎通ができていて、組織の成員のすべてが自らの目標について理解していなければなりません。はじめにはじめに
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