2013年改定にあたっての「まえがき」 2001年に本著を上梓してから12年の年月が流れました。この12年間、グローバル経済に翻弄される労働組合の活動は、国内外を問わず、ますます混迷を深めるばかりです。それは、グローバル・サプライ・チェーンの中で製品が出来上がっていき、製品生産工程が国境を越えているからです。そのため、グローバル時代の企業が生み出す付加価値は、国境を超えて対外漏出していきますので、その国の富として国民全員を潤す付加価値を形成することはありません。いくら本社が日本国内にあっても、最適生産のために工場を海外に持っていくために、国内の雇用と賃金は劣化するばかりです。アダム・スミスが「国富論」で指摘した「見えざる手」が、今日の(レーガン・サッチャー・中曽根政権が切り開いた)グローバル時代では、地球的規模で機能しているからです。それは、もはや先進国(G7)の人々だけが経済的に豊かに生きることが出来ない時代になっている、ということなのです。最低でもG20の国々の経済・生活水準が均一化するまで、G7の国々の雇用と賃金の低下は続くことでしょう。この事態に対する対応策は、G7の国々の雇用と賃金が、G20の均一化した水準にまで低下することを前提にして、そのような暮らし方の中で、より豊かな人間的な生き方(働くことを軸とした安心社会)を模索する以外ありません。私たちには、そのような価値判断を持ちつつ、自律的な意思決定と行動が求められており、そういった時代に入っているのです。しかし、本稿にて解説している「職場討議・集会の進め方」は、どのような時代になろうとも組織運営の基本中の基本であるため、時代遅れになることはありません。これからは、誰かが引っ張る組合活動ではなく、組合員一人ひとりが当事者として参画し、自律的な意思決定と行動を導きだす組織運営が必要です。そのため、このような基本を学ぶニーズは高まっているとも言えましょう。私たちが、私たちによる、私たちのための「働くことを軸とする安心社会」を築くには、まずなによりも私たちの手によって、社会を構成する主要な構成要素である企業(組織)を「働くことを軸とする安心企業(組織)」にすることが求められます。
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