8「人が育つ関係性」が整わない企業環境仕事のモチベーションが低下した経緯と会社の対応1990年代から2000年にかけて、多くの企業が能力成果主義を導入し、個人で成果を上げる人にスポットを当てるケースが目立ちました。今も、その傾向は変わっていません。その結果として起こったことは、仕事はできるが部下を育てられない上司、すなわちリーダーシップの発揮が苦手なハイパフォーマーの出現です。そして、意思決定のスピードアップの名の下、組織をフラット化することになり、多くのマネジャー(上司)は、自らも成果を上げることが第一義とされ、部下を育てるために時間を費すことが難しくなりました。その結果、組織から、「人が育つ風土」という目に見えない価値がますます失われることになりました。企業の人事部は、人材育成に関する予算を削減し、選抜型短期成果重視の人材育成方式を取り入れざるを得ず、職場単位での適切なマネジメントの不在が労働組合からも叫ばれるようになりました。企業は、制度目的が現場で理解されず、間違った成果主義が組織に浸透したことを察知し、対策として評価制度の指標にチーム目標を導入する、成果と行動の評価配分を調整し、仕事のプロセスに着目するなどといった修正を余儀なくされました。また、職場では部下がより責任を持たされる管理者になりたがらない傾向が広がって、仕事へのモチベーションが低下しており、その対策として技術・スキル系の教育に力を入れる企業が目立ちます。さらに、同僚や仲間と職場の課題を共有できず、上司にも相談できずに問題を一人で抱え込んでしまい組合員が孤立化する傾向が見られます。そのため、仕事へのモチベーションが低下した、「不機嫌な職場」が多いといわれています。これらに対して、企業は対策を講じますが、どうしても目先の利益を追求することが最優先となり、十分な改善がなされていないのが現状です。それでは次に、労働組合としてこの問題にどのように対応しているかを見てみましょう。
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