Union Success Story Union Success Story
東芝テックソリューションサービス労働組合

「職場は自分たちで良くする」
──3ステップで生まれた現場の変化

Case

東芝テックソリューションサービス
労働組合

東芝テックソリューションサービス労働組合さんと談笑

原田 裕一郎 委員長

関口 朋和 書記長

 組織概要

業種
電気機器
組織名
東芝テック
ソリューションサービス労働組合
組合員数
1,733名(2025年9月1日時点)
組織構成
13分会

 この記事でわかること

  • ・「受け身」な職場風土を変える「職場自治」に取り組むまでの背景
  • ・3ステップで「職場自治」を推進した具体的プロセスと地道な実践
  • ・小さな成功体験から広がる組合役員の意識の変化と今後の活動の展望

新設から10年あまり、職場に根づいた組合活動を目指して──。
風通しのよい現場づくりのために、会社と協力して始めた「職場自治」
小さな一歩から広がった活動の軌跡を、東芝テックソリューションサービス労働組合の原田裕一郎委員長と関口朋和書記長にお伺いしました。

 職場自治とは?

  • 組合役員を中心とした職場改善活動のこと。職場の組合員自らが働きやすい職場を描き、職場の仲間と協働し、仕事へのモチベーションを高め、自分たちの職場や会社に対する満足度を高めることを目的とします。

01 背景|トップダウン風土から始めた組合活動と現場の声を育てる挑戦

01 課題・背景|トップダウン文化の中で始まった組合活動と、現場の声を育てる挑戦
私たちは比較的新しい組合で、結成から12年ほどです。社内に労組がなかったため、当初は東芝テック労組の支部としてスタートしました。 組合発足時に職場労使懇談会を開催しましたが、初めての経験ということもあり、経営層・管理職からの理解が得られず、職場委員や分会長も本音が言えないような雰囲気でした。
特に当社のような24時間365日体制の保守サービス業は、どちらかといえばトップダウン型の社風で社員が意見を言いづらい文化があったことも事実です。

我々が執行部に加わった2016年頃は、組合活動もごく一部の情報発信に限られていて、レク活動も少なく、かつての社員会の延長のような、受け身な関わり方が一般的でした。
そういう状況もあり、「職場情報交換会」を職場労使懇談会の代わりに開催しましたが、組合に対する不満や愚痴が中心となり、正直手応えがありませんでした。

そんなとき、j.unionさんから提案されたのが「職場自治」です。
ちょうど、東芝グループ連合の会議に参加した際に、他労組と比較して「自分たちはまだまだだな」と痛感したこともあり、その提案に大きな可能性を感じ、本格的に取り組むことを決意しました。

02 取り組み|職場を変えた、職場自治の3ステップ

まずは、社内で組合に理解のある労政担当役員に趣旨を説明し、各地の支社長にも職場自治活動に協力いただけるよう会社からの働きかけをお願いしました。
折しも、会社側も組織風土を変えていきたいと感じていたタイミングで、組合と会社の思いが重なったことが環境整備の第一歩となりました。
活動は大きく3ステップです。

STEP1

コミュニケーション強化研修

職場内の
関係構築の土台をつくる

STEP2

職場集会の開催

前向きな雰囲気で
課題共有・議論

STEP3

職場労使懇談会の開催

組合と経営の
相互認識共有の場へ

2-1 ステップ1:関係づくりの土台をつくる研修

02-1 ステップ1:関係づくりの土台をつくる研修
ステップ1は、分会長・職場委員を対象としたコミュニケーション強化研修です。
職場内の関係性をより良くし、組合員から本音を引き出せるスキルを磨くことを目的としました。
彼らには、職場の現状を観察し、声を拾い寄り添う存在としての土台を作ってもらいました。

2-2 ステップ2:前向きな対話を引き出す職場集会

ステップ2では、職場集会を開催しました。
まず「職場の良いところはどこか?」を話し合い、その上で課題抽出に進みました。
「この課題は会社に依頼する」「これは自分たちで考えることができる」「これは一緒に取り組みたい」など、課題をカテゴリに分けることで、単なる不満の発散で終わらない前向きな議論を実現しました。

2-3 ステップ3:経営とつながる職場労使懇談会

そしてステップ3の「職場労使懇談会」では、組合からの提案に対し、経営層の考えも共有される場を持つことができました。
最初は13ある分会のうち、関西分会と北関東分会の2つをモデルに、小さく始めました。
動き出しは決してスムーズではなく、関西分会の分会長にも何度も趣旨を説明し、直接足を運んでは説明とフォローの繰り返しでした。

03 成果|小さな成功体験が広げた共感と職場の変化

小さな成功体験から始まった組合活動は、仲間の共感を広げ、支え合いながら職場改善へとつながっていきました。
さらにその動きは会社の姿勢や制度の変化にも波及し、組合が課題解決を担う存在として認知されるまでに成長しています。
ここでは、その成果の歩みを3つの段階でご紹介します。

3-1 職場自治の第一歩となった成功体験

03-1 職場自治の第一歩となった成功体験
関西分会で活動が一定の形になり、メンバーから「すごく大変だったけど、楽しかった」「気づきが多かった」といった声が出てきたときには、本当に嬉しかったです。自分たちで職場課題を見つけ、自ら考えて答えを出す。そしてその意見を経営層へ伝えることができる。
この経験が、いわゆる“職場自治”の第一歩になった手応えがありました。

3-2 支え合いながら広がっていった職場自治の輪

成功体験をもとに全組織的な展開の機運が高まり、2年目には東京分会、九州分会が新たに加わりました。
特に印象深いのは、関西の分会長が悩んでいた九州の分会長をサポートすべく、自分の有給を使って宮崎まで訪れ、一緒に活動したことです。「お互い支え合う」という文化が少しずつ芽生えてきたと感じた瞬間でした。

具体的な改善例としては、現場からの声に基づいて、負荷軽減のため台車が導入されたり、不足していたロッカーが増設されたり、作業ローテーションが見直された現場もあります。
さらに、ある支社での評価制度の不透明さが課題として挙がり、これがきっかけで明文化と是正が約束され、モチベーション改善にもつながりました。

3-3 現場改善と会社の変化、そして広がる認知

03-3 現場改善と会社の変化、そして広がる認知
会社側の姿勢も変わり始め、新卒社員向けのオリエンテーション資料内で組合活動が紹介されるようになりました。
労使協議の場では、支社長からの継続希望だけでなく、未実施の支社の支社長からも取り組みを広げてほしいと声をいただきました。
支社レベルだけではなく、「労使で取り組めることが無いか」と経営から相談があったことから、組合が“課題を解決できる組織”として社内で認知されつつあると感じており、取り組みの中で最も嬉しい成果です。

04 展望|「自分たちの職場は自分たちが良くする」を全分会へ

04 展望|「自分たちの職場は自分たちが良くする」を全分会へ
現在は5つの分会で職場自治に取り組んでいますが、今後取り組みをさらに広げ、全分会で展開していきたいと考えています。現在この取り組みを分会と一緒に進めてきた執行部メンバーは3名なので、活動の拡大には、より多くの執行部メンバーの参画が不可欠です。「自分たちの職場は自分たちが良くする」という意識を役員全体に広げていくことが今後のカギになります。

また、取り組みを無理なく続けるために、月一回の安全衛生委員会の後に研修や懇談会を実施するなど、職場役員の負担を減らす工夫も継続しています。一方で、各ステップ間での合同連絡会で情報共有は密にできるように図っています。

そして今後は、グループ会社である東芝テック労働組合と連携し、委員会活動やイベントなどを共同開催することも構想中です。労使協調をベースに、より働きがいのある職場を、仲間とともに築き上げていく。この活動が組合員・会社・お客様すべてにとってプラスになるよう、これからも一歩一歩、積み重ねていきたいと思います。