Union Success Story Union Success Story
ダイセル労働組合

形式的な評価面談 から、
「成長につながる対話」へ。
労使協働で進めた“評価制度運用”と組合の実践的アプローチ

Case

ダイセル労働組合

ダイセル労働組合さま

中央副執行委員長

中央執行委員長

中央書記次長

伊藤 昭徳 

藤田 将士 

安岡 翔平 

 組織概要

業種
化学系製造業
組織名
ダイセル労働組合
組合員数
2,096名(2025年7月時点)
組織構成
6支部1分会

 この記事でわかること

  • ・形式的な面談が続く背景と、制度運用の定着後に明らかになった“本質的な課題”
  • ・労働組合が主体となって取り組んだ、評価制度を“使いこなす力 ”を底上げする具体策
  • ・140名規模の講座を通じて見えてきた“面談の質の変化”と、今後さらに高めていくための改善ポイント

01 背景|制度運用が定着する中で見えてきた「次の課題」

01 課題・背景|制度運用は進んだものの、成長支援の観点では課題が残った

1-1 制度運用は進んだものの、成長支援の観点では課題が残った

私たちが組合として目標管理制度(MBO)の活用推進に取り組み始めたのは2010年代です。
当時は、期初の目標設定や育成面談が十分に行われていない職場もあり、制度が期待どおりには活用されていませんでした。

そこで組合としてアンケートや情報発信を重ね、会社へルール順守の徹底を申し入れるなど、運用の土台づくりに取り組んできました。
こうした取り組みの成果もあり、 2016年にはイントラネット上での運用が可能となり、目標設定や面談は“実施されることが当たり前”という状態を作ることができました。
しかし2020年頃、あらためて大きな課題が見えてきます。

形式的な面談では組合員の成長につながらないという現実です。

1-2 “労使協働”の土台が生まれた2020年〜2022年

02 取り組み|評価制度を“使いこなす力”を育てる
こうした中で2020年、労働組合は新ビジョンとして「一人ひとりが“自分らしさ”を磨き、輝いている」を掲げ、組合員の成長支援に本気で向き合う姿勢を組織として明確にしました。

さらに、2022年の人事制度改定を受け、春季交渉では「新人事制度の浸透」を主要テーマに設定。
面談の実施率などのデータ指標は労使で共有し、制度理解などの“質的な状況”をつかむヒアリングは、管理職は会社側、組合員は組合がそれぞれ担当する形で合意しました。
また、その後の組合員への育成活動は、組合が主体となって進めることで方向性がまとまりました。

こうして、制度運用をめぐる“労使協働”の土台が形づくられていきました。

02 取り組み|評価制度を“使いこなす力”を育てる

02 取り組み|評価制度を“使いこなす力”を育てる

2-1 組合員が現場で活かせる「活用マニュアル」を独自に作成

制度の大幅改定を受け、労働組合として最初に着手したのが「評価制度活用マニュアル」の制作でした。

人事部門でも2022年4月の制度施行に合わせて基本マニュアルが整備されていましたが、組合としては「組合員にとって分かりやすく、前向きに制度を活用できる内容にしたい」という思いがあり、独自のマニュアルを制作することにしました。
2-1 「活用マニュアル」ダイセル労働組合
活用マニュアルは、賃金制度を含む制度全体の枠組みが固まった段階から設計を進め、約1年の準備期間を経て2023年に発行しています。
内容面では、制度理解に加えて、上司と部下のコミュニケーション向上もねらいとしていたため、「理論編」と「実践編」の2部構成としました。
理論編では制度内容を整理し、実践編では面談に臨むスタンスや面談の質を高めるテクニック、上司とのコミュニケーションなど実務に直結する内容を扱っています。

また、このマニュアルは支部での説明や講座にも使われる資料であることから、本部だけで決めず、支部長とも相談しながら“現場で使いやすい形”となるよう表現や構成を検討しました。
j.unionさんには、制作過程で私たちの細かな要望にも柔軟に対応してもらえたので、現場の声を生かした冊子を作ることができたと思っています。

2-2 実践力を育てる「評価制度使いこなし講座」

2-2 実践力を育てる「評価制度使いこなし講座」
マニュアルを配布するだけでは“読んで終わり”になってしまう可能性が高かったため、次のステップとして「評価制度使いこなし講座」を企画し、就業時間内に実施しました。
これは単なる説明会ではなく、目標設定や対話の場面を具体的にイメージしながら、制度を“使いこなす”ための実践的なスキルを身につける講座 です。

当初は「被評価者研修」という仮称でしたが、制度を前向きに活用するイメージが湧きにくいという声もあり、名称を「使いこなし講座」へと改めました。

講座は j.unionさんによる講義+フリーディスカッション の構成です。
講義では、活用マニュアルに沿って制度のポイントを解説しました。
また、この講座には人事も立ちあってもらいました。
そうすることで、フリーディスカッションでは、参加者がその場で人事に疑問を投げかけることができ、面談や評価制度に関する“もやもや”を解消するきっかけにもなりました。
組合としても組合員の顔が見える場での意見収集となり、アンケート調査よりもリアルな声が拾える貴重な場となりました。
2-2 参加雰囲気
参加対象は、基本的に有志ではあります。
ただ、自由応募だけに頼るのではなく、「将来活躍してほしい人」「今は伸び悩んでいるが可能性のある人」など、メインターゲットを明確にしたうえで、現在は職場の上長の推薦なども得ながら参加者の幅を広げています。

03 成果|講座によって深まった制度理解と、面談の質の向上

03 成果|講座によって深まった制度理解と、面談の質の向上
講座を受講した140名弱のうち、94%が「今後に役立つ」と高く評価しました。

組合員からは、
「目標設定の考え方が理解できた」
「キャリア形成として考えるきっかけになった」
など、前向きな声が多く寄せられています。

また、講座を受けた前後の変化として、約9割が“よい変化が生まれた”と回答しています。 主な変化は以下の3点です。

  • 1. 面談に向けた事前準備がしっかりできるようになった
  • 2. 上司とのコミュニケーションが円滑になった
  • 3. 目標設定の内容がより充実した

これまで“評価されるための場”と捉えられがちだった目標面談が、「“自分の成長と将来のための機会”へと意義づけが変わったことは、私たちとしても大きな手応えです。

また、本取り組みは、職場の理解促進や労使連携など一筋縄では進みませんでした。しかし、こうした取り組みを組合独自で実現できたこと自体が、組織強化という点で大きな収穫だと捉えています。

04 展望|組合員一人ひとりの成長につながる制度活用へ

展望|組合員一人ひとりの成長につながる制度活用へ
2年間の試行錯誤を経て、成果が見える一方で、課題も見えてきました。
講座に自発的に参加するのは前向きな層が中心で、職場によって制度理解や活用の“温度差”が生まれつつあります。

そのため今後は中途採用者や入社年数ごとに講座機会を組み込み、「育成の機会を仕組み化する」ことも検討しています。
制度理解を個人の意欲に委ねず、誰もが自然に習得できる状態を目指していきます。

また、冊子や講座内容を見直しながら、職場で労使の対話が生まれる風土づくりにも注力します。
支部委員をはじめとする現場リーダーがフラットに話を聞き、意見を引き出せるようになることが、職場課題の発見や改善につながると考えているためです。

組合員一人ひとりの成長につながる制度活用の推進を、労使で着実に進めていきたいです。