被考課者とは、人事評価制度において「評価を受ける側」にあたる社員を指します。
一般的には、上司から評価を受ける部下の立場にある社員のことです。
人事評価制度というと、評価する側である上司(考課者)に注目が集まりがちですが、評価を受ける側である被考課者が制度をどう理解し、どう関わるかによって、評価の納得感や仕事への向き合い方は大きく変わります。
本記事では、被考課者の意味や役割、人事評価制度との関係を整理しながら、被考課者が評価制度とどう向き合っていけるのか、また、評価を受ける被考課者の視点から、組合として関われる余地についても考えていきます。
この記事でわかること
- 被考課者とは何か、その意味や人事評価制度の中での立場
- 被考課者が評価制度と向き合う際に押さえておきたい考え方
- 被考課者の視点から、評価制度を支えるために労働組合としてできること
1. 被考課者とは?意味と制度上の立場
被考課者とは、人事評価制度において「評価を受ける側」に位置づけられる社員のことです。
多くの企業では、上司が部下を評価する仕組みを採用しており、このとき上司が「考課者」、部下が「被考課者」と呼ばれます。
被考課者は、評価を受ける立場として、人事評価制度のさまざまな仕組みの影響を直接受ける存在でもあります。では、その人事評価制度は、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。
2.人事評価制度の基本構造
被考課者がどのように評価され、処遇へとつながっていくのかを理解するために、次に人事評価制度全体の仕組みを見ていきます。
人事評価制度は、主に次の3つの要素から構成されています。
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- 等級制度
- 社員の能力や職務内容に応じた社内での位置づけを示す制度で、人事制度全体の基盤となるものです。
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- 報酬制度
- 等級や評価結果に基づいて、給与や手当などの処遇が決まる仕組みです。
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- 考課(評価)制度
- 成果や能力の発揮状況など、日々の仕事ぶりを評価するためのルールです。
被考課者にとって重要なのは、これらの制度が単独で存在しているのではなく、相互に連動しながら評価や処遇が決まっているという点です。
自分の評価がどの制度に基づいて行われ、どのように処遇へ反映されるのかを理解することは、評価の背景を理解するうえで重要なポイントです。
では、こうした制度の仕組みを前提に、被考課者は実際の評価の場面で、どのような状況に置かれているのでしょうか。
3. 被考課者を取り巻く評価の現状と課題
被考課者は、人事評価制度の中で評価を受ける立場にありますが、実際の職場では、自分の仕事や取り組みがどのように評価に反映されているのかを、十分に把握できないまま評価を受けているケースも少なくありません。
近年は、プレイイングマネージャーとして自身の業務も担う上司が多く、部下一人ひとりの業務内容や成果を、日常的に細かく把握することが難しい職場環境も増えています。
その結果、被考課者側には
「きちんと見てもらえていない」
「評価の基準が分かりにくい」
「なぜその評価になったのか納得できない」
といった不満や戸惑いが生まれやすくなります。
こうした背景の一つとして、被考課者に対する教育の不徹底が指摘されています。多くの企業では評価する側である上司向けの「考課者訓練」は実施されていますが、一方で評価を受ける側である被考課者に対して、評価制度の捉え方や関わり方を整理する機会が十分に設けられていないのです。
評価は、期末の結果だけで決まるものではなく、日々の仕事の進め方や、上司とのやり取り、目標や成果の共有といった積み重ねの中で形づくられていきます。
しかし現場では、そうした評価に至る過程が十分に共有されないまま、結果だけが伝えられるケースも少なくありません。
そのため、評価は上司から一方的に下されるものとして受け取られがちです。
一方で、被考課者が評価制度を理解し、自分の仕事や成果を伝えながら関わっていくことで、評価を一方的に受け取っていると感じる場面を減らしていくこともできます。
4. 被考課者が評価制度と向き合う際のポイント
被考課者が評価制度と向き合ううえで大切なのは、評価を「期末に結果として受け取るもの」として捉えるだけでなく、評価に至る一連の流れの中に、自分自身も関わっているという視点を持つことです。
多くの企業では、人事評価は一定の期間を区切り、目標の設定から進捗の確認、振り返りまでの流れを通じて行われています。
そのため、評価は期末の結果だけで決まるものではなく、期初・期中・期末それぞれの関わり方が、評価の受け止め方や納得感に影響します。
以下では、評価制度を前提に、被考課者が期初・期中・期末に意識しておきたい関わり方のポイントを整理します。
4-1. 期初に意識したいこと
期初は、目標や役割が定まる重要なタイミングです。
上司や部門の方針を踏まえながら、自分の業務内容や役割がどのような期待のもとに置かれているのかを確認しておくことが大切です。
目標については、「何を目指すのか」だけでなく、「どのような状態になれば達成といえるのか」をできるだけ具体的に共有しておくことで、後々の評価に対する認識のズレを防ぎやすくなります。
また、期初の段階でチームメンバー同士がそれぞれの目標や役割を共有しておくことで、仕事の進め方や優先順位を理解し合いやすくなり、必要な場面でお互いに助け合える関係を築きやすくなります。
4-2. 期中に意識したいこと
期中は、日々の仕事の積み重ねが評価につながる期間です。
進捗や成果を一人で抱え込まず、上司や関係者とこまめに共有していくことが重要になります。
定期的な面談や日常のやり取りの中で、「今どのような状況なのか」「どのような工夫や苦労があるのか」といった点を伝えておくことで、評価が結果だけで判断されにくくなります。
4-3. 期末に意識したいこと
期末は、一定期間の取り組みを振り返るタイミングです。
達成できたことだけでなく、うまくいかなかった点や工夫した点も含めて整理し、自分なりの振り返りを言葉にしておくことが大切です。
評価面談は、結果を一方的に受け取る場ではなく、これまでの取り組みをすり合わせる場として捉えることで、評価への納得感も高まりやすくなります。
4-4. 評価制度との向き合い方
評価制度は、被考課者にとって、ただ受け身で向き合うものではありません。
評価は期末に突然下されるものではなく、目標の設定から日々の仕事の進め方、上司とのやり取りを通じて、時間をかけて形づくられていきます。
そのため、評価制度を「結果だけを受け取る仕組み」として捉えるのではなく、評価に至る一連の流れの中に自分自身も関わっている、という視点を持つことが大切です。
評価制度との向き合い方次第で、被考課者は仕事の進め方を、上司からの指示や命令によって行うものから、納得や共感を土台に進めていくものへと変えていくことができます。
5. 被考課者をめぐる課題に、労働組合はどう関われるのか

社員の教育や育成は、被考課者を含め、本来は会社が担うべきものです。
評価制度についても、制度設計や運用の整備を含めて、企業側が主体となって取り組むことが前提となります。
一方で実情として、評価制度の考え方や向き合い方までを含めて、すべての被考課者に十分な機会を用意することは、現実的に難しい場面もあります。
被考課者は人数が多く、業務内容や立場もさまざまであるため、制度理解を丁寧に深めるところまで、どうしても手が回らない領域が生じやすいのが実態です。
こうした領域について、労働組合には様々な関与事例があります。
多くの労働組合では人事制度や評価制度について会社と協議を重ねていますが、組織によっては、アンケートを活用して職場の実態を把握したり、評価面談の実施や運用を促したりしているところもあります。
会社側だけでは手が回りにくい部分を、被考課者の立場から組合が補完的にサポートすることで、評価に対する納得感を高めていくことができます
処遇や評価への関心が高まる中で、被考課者の視点から制度理解を支える取り組みは、組合ならではの関わり方の一つといえるでしょう。
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制度理解や評価への向き合い方を、どのように現場で支えてきたのか、ぜひ参考にしてください。
