人事評価制度は整っている。
面談も実施している。
それでも、「評価に納得できない」「基準が分かりにくい」といった声が組合員から聞こえてくることはないでしょうか。
実際、人事評価の結果に「納得していない」と回答した人は40.9%にのぼるという調査もあります(Job総研「Job weeQ」調査)
その背景には、人事評価制度そのものではなく、“運用のされ方”に課題が潜んでいることがあります。
本記事では、労働組合の立場から、人事評価制度の納得感を高める運用改善の取り組みを整理します。
1. 人事評価制度は“設計”より“運用”で差がつく
人事評価制度は会社が設計するもの。
そう考えると、「組合にできることは限られている」と感じるかもしれません。
しかし、現場での納得感を左右しているのは、
実は制度の仕組みそのものよりも、日々の“運用のされ方”です。
たとえば、
・面談の実施時間は十分か
・評価者と被評価者間で、評価の観点を事前に共有しているか
・実際の業務と実績に基づいた目標設定や振り返りになっているか
制度を作り込んでも、運用が形式的になると、組合員は納得感を持ちにくく、組織の成長にもつながりません。
こうした「制度運用」の領域こそ、被考課者に近い立場にある組合が力を発揮できる場面でもあります。
2.労働組合ができる人事評価制度の運用改善
人事評価制度の納得感は、面談の場だけで生まれるものではありません。
面談は、単に業務を報告する・評価を伝えられる場ではなく、目標や役割をすり合わせる機会でもあります。
そのため、期初・期中・期末それぞれの時期に応じた支援が重要です。
ここでは、期初・期中・期末の3つの段階に分けて、労働組合ができる具体的な取り組みを整理します。
2-1. 期初:面談前の土台を整える
期初は、面談に向けた準備の時期です。
納得感は、この段階から形成され始めます。
制度を十分に理解しないまま面談に臨めば、認識のズレや説明不足が生まれやすくなります。
例えば、次のような取り組みがあります。
■ 制度理解セミナーの実施
評価制度の仕組みだけでなく、
• 年間の流れの中で各時期に意識すること
• 面談前の準備のポイント
• 日常のコミュニケーションのあり方
• 面談での対話のコツ
などを扱います。
さらに、労使で共催できれば就業時間内での実施が可能になる場合もあり、参加しやすい環境を整えやすくなります。
また、制度の趣旨を同じ言葉で伝えやすくなり、組合員の理解も深まりやすくなります。
■ 小冊子や機関誌での発信
年間スケジュールや準備のポイントを整理し、面談前に確認できる形で共有します。
発信媒体によって、次のような活用が考えられます。
評価制度の仕組みだけでなく、
・小冊子
面談準備の際に手元で確認でき、必要なときに見返して活用できます。
制度理解セミナーと併用し、受講者が手元で確認できる資料として活用することも可能です。
・機関誌
期初・期中・期末など、それぞれのタイミングに合わせて意識を高めることができます。
課題や目的に応じて発信方法を選ぶことが大切です。
制度を理解することと同時に、どう活かすかまで伝える視点が重要です。
実際に、制度理解セミナーと小冊子制作を組み合わせて支援した事例もあります。
面談前の準備を体系的に整理し、被考課者が主体的に面談に臨めるよう設計したことで、理解と納得感の向上につながりました
2-2. 期中:日常のコミュニケーションを支え、実態を拾う
この時期は、組合員の日常のコミュニケーションを支えながら、同時に現場の実態を丁寧に拾う時期です。
評価は、面談の場だけで決まるものではありません。
期中の日常的な対話やフィードバックの積み重ねが、最終的な評価への納得感を左右します。
例えば、次のような取り組みがあります。
■ 上司(考課者)とのコミュニケーション力を高める教育・サポート
日常の報告や相談、フィードバックの積み重ねが、面談時の納得感を左右します。
こうした対話が不足していると、面談の場に評価説明や認識合わせが集中し、直前になって目標や成果を慌てて整理する状況が生まれやすくなります。
期中の段階で対話の機会を積み重ねておくことが、面談を建設的な対話の場にするための土台になります。
例えば、次のような施策が考えられます。
・中間面談や1on1の実施を促す
・上司部下のコミュニケーションスキルを高める研修の実施
(例.フォロワーシップ、アサーション)
■ 支部委員・職場委員による現場ヒアリング
形式上は制度が運用されていても、実際には十分な対話が行われていない場合もあります。
定期的な職場集会や日常活動の中で、
・面談の実施状況
・上司とのコミュニケーションの状況
・職場の空気感
などを、現場の役員を通じて把握しましょう。
まずは、そうした“運用の実態”をつかむことが、次の改善につながります。
2-3. 期末:実態と意識を整理する
期末は、年間の運用を振り返る時期です。
会社全体を俯瞰しながら、調査などで実態を把握し、その結果を会社への提言につなげていきましょう。
この段階では、次のような取り組みがあります。
■ アンケートの実施
制度や面談の「実態」と、納得感や動機づけといった「意識」の両面から確認します。
実態と意識を掛け合わせて分析することで、不満や納得感の背景にある要因がより明確になります。
また、職場ごとの傾向やばらつきも確認することで、課題の所在が見えやすくなります。
会社に対して制度運用の改善や改定を提案することにつなげましょう。
3. 年間を通じた運用支援が、人事評価制度の納得感を底上げする
評価制度そのものが整っていても、運用の仕方次第で納得感は大きく変わります。
面談の場だけを整えても、期初の準備や期中の日常の対話が伴っていなければ、十分な納得感にはつながりません。
納得感を左右しているのは、制度そのものよりも、年間を通じた運用のあり方です。
評価制度の運用は基本的に会社が行うものです。
しかし、多くの企業では、評価者育成はされていても、被評価者側への十分な説明や準備支援が行われていないことも少なくありません。
そうした部分を、被評価者に近い立場にある組合が補完することで、運用の質はより高められていきます。
人事評価制度の取り組みを支えるサポート
評価制度の納得感を高める取り組みは、一つひとつはシンプルでも、年間を通じて設計し継続することが重要です。
j.unionでは、
・制度理解セミナーの企画・実施
・小冊子や機関誌コンテンツの制作支援
・アンケート設計・分析サポート
などの個別支援に加え、活動設計そのものから一緒に整理することを大切にしています。
単発の施策ではなく、期初・期中・期末を通じた取り組みとして、それぞれの組織に合った形を一緒に考えていきます。
自組織に合った取り組み方を整理したい場合は、評価制度運用の支援についてお気軽にご相談ください。
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