カスタマーハラスメント(カスハラ)に関する相談は、近年、労働組合にも多く寄せられるようになっています。
「これはカスハラにあたるのか」
「組合として、どこまで関与すべきか」
「会社にどう伝えればよいのか」
本コラムでは、組合員からカスハラ相談を受けた際に、労働組合として押さえておきたい支援の考え方と、会社との交渉で意識したいポイントを整理します。
1. カスタマーハラスメントとは?労働組合が押さえておきたい基本整理
カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)を、厚生労働省「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」では次のように定義しています。
①顧客等からのクレーム・言動のうち、②当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、③当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの
つまり、カスハラとは、顧客などからのクレームや言動のうち、「要求内容」または「その手段・態度」が社会的に見て不相当であり、その結果として働く人の就業環境に悪影響が生じる行為を指します。
近年は接客業に限らず、
・発注元企業による過剰な要求
・立場を利用した威圧的な言動
・社内外での不当なクレーム対応の押し付け
など、さまざまな場面で問題化しています。
こうしたカスハラは、現場や個人の判断に委ねられやすく、結果として組合員が一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。
そのような事態を防ぐためにも、組合員から相談を受けた際に、どのように対応するかが重要になります。
2.組合員からカスハラ相談を受けたときの基本姿勢
組合員から寄せられるカスハラ相談は、内容や状況が一つひとつ異なり、対応に迷う場面も少なくありません。
だからこそ、個別の判断に入る前に、組合役員として共通して持っておきたい「基本的な姿勢」を整理しておくことが重要です。
2-1. まずは冷静な事実確認と丁寧なヒアリングを行う
組合員からカスハラに関する相談を受けた際、最初に大切なのは事実を整理することです。
・どのような言動があったのか
・いつ・どこで・誰から行われたのか
・業務への影響や心理的負担はどの程度か
といった点を丁寧に聞き取り、カスハラに該当するかどうかを冷静に見極める必要があります。
その結果、仮に内容が正当なクレームであると判断される場合には、現場での改善につなげる観点から、対応の方向性を整理していくことが大切です。
2-2. 現場任せにせず、組合が主体的に関与する
現場では、上司がカスハラを問題として扱わず、対応が担当者任せになってしまうこともあります。
しかし、放置すれば
・精神的負担の蓄積
・休職・離職
・職場全体の士気低下
といったリスクにつながりかねません。
こうした状況では、労働組合が早い段階から関与し、相談内容を共有・記録しながら対応を進めることで、組合員の負担を軽減し、再発防止につなげる役割を果たすことができます。
また、内容に応じて、会社と連携しながら、
・メンタルヘルスケア対策を講じる
・会社のルールに基づき、対象となる顧客と接点を持たせないよう働きかける
といった対応を検討することも、 組合員を守るための重要な取り組みです。
3. カスハラを現場任せにしないための組織的な対応
カスハラへの対応を、個々の相談対応だけで終わらせてしまうと、同様の問題が繰り返されるおそれがあります。
再発防止と組合員の安心につなげるためには、労働組合が会社と連携し、組織としての対応の仕組みを整えていく視点が欠かせません。
3-1. 会社と連携した仕組みづくりが不可欠
個別対応に加えて重要なのが、組織としての対応体制です。
労働組合は、会社と連携しながら以下の点を整理・提案していくことが求められます。
・カスハラの判断基準の明確化
・報告・相談ルートの整備
・初期対応から判断・対応までのフロー構築
・相談窓口の設置や周知
・メンタルヘルスケア体制の確立
これにより、「誰が、どこで、どう対応するのか」が明確になり、現場が一人で抱え込む状況を防ぐことができます。
3-2. 労使交渉で押さえておきたいカスハラ対策の視点
組合が会社と交渉する際には、次のような観点を共有すると効果的です。
・カスハラは安全配慮義務に関わる課題であり、放置すれば職場リスクとなる
・労使で共通の判断基準と、報告・対応フローを明確化する
・メンタルヘルスケア体制(相談窓口・教育の整備など)を確立する
・顧客満足と従業員の尊厳を両立させる方針を、文書として示す
これらを踏まえて、会社に「現場任せにしない仕組み」を提案していくことが、労働組合に求められる役割です。
つまりカスハラ対策は「コスト」ではなく、職場を守り、企業リスクを低減するためのリスクマネジメントとして位置づけることが重要といえます。
3-3. カスハラ対策は、労働組合が現場の声をつなぐ役割
カスタマーハラスメントは、特定の業種や職種に限った問題ではありません。
立場の違いを背景とした不当な要求は、どの職場にも起こり得ます。
労働組合は、
・組合員の声を、実態把握やヒアリングで丁寧に拾い上げ
・事実に基づいて課題を整理し
・会社に対して事実に基づいた改善提案を行う
ことで、働く人と企業の双方を守る役割を果たすことができます。
この記事を書いた人
池上 元規
社会保険労務士法人 j.union代表社員、社会保険労務士
私たちは、j.union株式会社の関連会社として、労務問題を専門に支援しています。中立的な視点から労働組合と企業の双方のメリットとデメリットを捉え、最適解を見つける「Be Fair
Mind」のスタンスで問題解決を支援します。今後の社会や働き方の変容に合わせて、お客様と共に労務に関する最適な解決策を導き、持続可能な組織体制づくりに貢献していきます。

