【2026年10月改正】同一労働同一賃金で労働組合が確認したい3つのポイント

2026.08.31 
 

「正社員だから」「非正規社員だから」。

待遇の違いを、雇用区分だけで説明していないでしょうか。

 

2026年10月1日から、改正された「同一労働同一賃金ガイドライン」が適用されます。

今回の改正では、賞与や退職手当、住宅手当、家族手当などについて、待遇の性質や目的を踏まえて待遇差を考える際の記載が充実・追加されました。

 

今回は、このうち労働組合の活動にも関わる「待遇差の考え方」に焦点を当てます。

組合役員のみなさんにとって、今回の改正は単に「非正規雇用労働者の待遇をどうするか」という問題ではありません。

「なぜ、この待遇になっているのか」を、制度だけでなく職場の実態から確認する機会でもあります。

 

本コラムでは、同一労働同一賃金の基本と2026年10月の改正内容を確認しながら、労働組合が職場で見るべき3つのポイントを解説します。

 

 

1. 2026年10月、同一労働同一賃金ガイドラインは何が変わる?

 

同一労働同一賃金では、正社員と非正規雇用労働者との間にある待遇差のうち、不合理なものをなくすことが求められています。

 

ただし、会社の判断であればどのような配置転換でも認められる、というわけではありません。

仕事内容や責任、配置変更の範囲などが異なれば、それに応じた待遇差が生じる場合もあります。

 

2026年10月の改正では、賞与や退職手当について、待遇の性質や目的を考える際の記載が充実しました。

また、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設の利用、病気休職、休暇などについても、待遇差を考える際の考え方が追加・明確化されています。(厚生労働省)

 

今回の改正で特に押さえたいポイント

 
主な項目 改正のポイント
賞与・退職手当 待遇の性質・目的を踏まえ、正社員とパート・有期雇用労働者との待遇差が不合理ではないかを判断します。賞与・退職手当には、労務の対価の後払い、功労報償など、さまざまな性質・目的があります。
住宅手当・家族手当など 住宅手当は、転居を伴う配置変更の有無など、支給目的に応じて待遇差を考えます。
福利厚生・休暇など 福利厚生施設の利用条件や休暇などについて、待遇差を考える際の考え方が示されています。
 

2.同一労働同一賃金で「正社員だから」は理由になる?

 

結論からいうと、「正社員だから」という理由だけで待遇差を説明できるとは限りません。

待遇差が不合理なものではないかを見るには、仕事内容や責任、働き方、待遇の性質・目的など、複数の事情を確認する必要があります。

 

そこで本コラムでは、労働組合が職場の実態を確認する際の視点を、

 

「仕事内容」→「責任・働き方」→「待遇の目的」

 

の3つに整理して見ていきます。

 

2-1.ポイント1 実際の仕事内容を見る

 

最初に確認したいのは、正社員と非正規雇用労働者が、実際にどのような仕事をしているかです。

「正社員」「パート」などの雇用区分だけでは、仕事の実態は見えてきません。

 

例えば、同じ販売職でも、

 
  • ・接客やレジ対応を中心に担当する
  • ・売場管理まで担当する
  • ・商品の発注や在庫管理を担当する
 

など、担っている仕事は異なる場合があります。

 

まずは、誰が、どの仕事を担当しているのかを整理してみましょう。

ここで大切なのは、「同じ仕事か、違う仕事か」をすぐに決めることではありません。

実際の職場で、どこまで同じ仕事をしているのか。どこに違いがあるのか。

その実態を把握することが出発点になります。

 

2-2.ポイント2 責任や働き方の範囲を見る

 

仕事内容が似ていても、仕事に伴う責任や、働き方の範囲には違いがあるかもしれません。

例えば、

 
  • ・業務上の判断をどこまで任されているか
  • ・クレーム対応など、どの程度の責任を担っているか
  • ・部下や後輩の育成を担当しているか
  • ・転勤や配置転換の可能性があるか
  • ・職務内容や勤務地が変わる範囲に違いがあるか
 

といった点です。

 

「同じ仕事をしているように見える」というだけでは、待遇差の理由までは分かりません。

どこまでの仕事を任されているのか。どこまで責任を負っているのか。

さらに、転勤や配置転換など、働き方の範囲にも違いがあるのか。

こうした点を確認することで、待遇差につながる違いが見えてきます。

 

2-3.ポイント3 待遇制度は「何のためにあるのか」を確認する

 

最後に確認したいのが、待遇制度そのものの目的です。

 

例えば、住宅手当を考えてみましょう。

「正社員に支給する」と決められていても、それだけでは制度の目的は分かりません。

住居費の負担を軽くするためなのか。転居を伴う配置変更の負担を補うためなのか。

目的によって、待遇差を見るポイントは変わります。

 

賞与や退職手当についても同じです。

賞与や退職手当には、労務の対価の後払い、功労報償など、さまざまな性質・目的が考えられます。

ですから、「正社員だから支給する」「非正規社員だから支給しない」という説明だけでは、その待遇差の理由が十分に説明できない場合があります。

 

では、その制度は何のために設けられているのでしょうか。

「正社員向けの制度だから」で終わらせず、制度の目的と実際の職場の状況を照らし合わせてみることが大切です。

 
 

3.労働組合だからこそ、職場の実態を確認する

 

同一労働同一賃金への対応では、就業規則や賃金制度を確認するだけでなく、制度上の違いと、実際の職場での働き方が一致しているかを見ることが重要です。

 

労働組合だからこそ確認できるのが、職場で実際に起きていることです。

 

ただし、制度だけでは職場の実態までは分かりません。

例えば、制度上は「正社員と非正規雇用労働者で仕事内容が異なる」とされていても、実際には同じ仕事をしていることがあります。

反対に、「同じ販売職」であっても、担当する業務や責任、判断の範囲が大きく違うこともあります。

だからこそ、労働組合が確認したいのは、規程や制度に何が書かれているかだけではありません。

 

実際の職場で、

 
  • ・誰がどの仕事を担っているのか
  • ・正社員と非正規雇用労働者で、どこに違いがあるのか
  • ・制度上の待遇差と、職場の実態が対応しているのか
 

を確認することが重要です。

 

組合員へのヒアリングや職場からの情報収集などを通じて、制度と実態を照らし合わせてみましょう。

そうして見えてきた実態をもとに、「なぜ、この待遇差があるのか」を労使で確認する。

制度と職場の実態をつなぐことは、職場の声を集め、実態を把握できる労働組合だからこそ取り組めることの一つです。

 
 

まとめ|「なぜこの待遇なのか」を説明できる職場へ

 

2026年10月の同一労働同一賃金ガイドライン改正は、待遇差を一律になくすことを求めるものではありません。

大切なのは、仕事内容や責任、働き方と、待遇制度の性質・目的を踏まえて、待遇差を説明できるかという視点です。

労働組合としても、制度の内容だけを見るのではなく、実際の職場に目を向けてみましょう。

 
  • 「誰が、どのような仕事をしているのか」
  • 「どのような責任を担っているのか」
  • 「その待遇は、何のためにあるのか」
 

この3つを確認することから、職場の待遇を考え直すことができます。

「正社員だから」「非正規社員だから」で終わらせず、「なぜ、この待遇なのか」を労使で説明できる職場をつくる。

同一労働同一賃金への対応を、職場の実態を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

 
 
 
 

この記事を書いた人

 

池上 元規

社会保険労務士法人 j.union代表社員、社会保険労務士


私たちは、j.union株式会社の関連会社として、労務問題を専門に支援しています。中立的な視点から労働組合と企業の双方のメリットとデメリットを捉え、最適解を見つける「Be Fair Mind」のスタンスで問題解決を支援します。今後の社会や働き方の変容に合わせて、お客様と共に労務に関する最適な解決策を導き、持続可能な組織体制づくりに貢献していきます。

池上 元規