労働組合の経営対策とは?基本とこれからの考え方・3つの具体策を解説

2026.10.08 

 

「会社の今後が見えにくく、組合員から将来への不安の声があがっている」

こうした不安に向き合うため、会社の経営状況を分析し、今後について労使で話し合うことは、労働組合の大切な役割です。

 

一方で、経営について提言しても形式的な回答にとどまり、経営対策をこの先どう進めていけばいいのか、難しさを感じることもあるのではないでしょうか。

 

会社と今以上に実のある議論を重ね、組合員の安心やより良い職場につなげていくために、これからの経営対策では何が大切なのでしょうか。

 

本記事では、労働組合における経営対策の基本を整理したうえで、これからの経営対策を考えるうえで大切にしたい視点と、3つの具体的な取り組みを紹介します。

 

 

1. 労働組合の「経営対策」とは?

1-1.経営対策の目的

労働組合の経営対策とは、会社の経営状況や方針を把握・分析し、労使協議や要求・提言につなげる取り組みです。

経営対策は、会社の経営状況を知ること自体が目的ではありません。

大切なのは、その情報を組合員の雇用や労働条件を守り、より良くしていくために活かすことです。

 

1-2.経営対策では何をする?

経営対策では、例えば次のような取り組みを行います。

 
  • ・ 決算書や経営指標などから会社の経営状況を把握する
  • ・ 経営計画や今後の事業方針を確認する
  • ・ 経営上の課題や雇用・労働条件への影響を考える
  • ・ 労使協議などを通じて会社と認識を共有する
  • ・ 必要に応じて労働組合として要求・提言する
 

つまり、財務分析などを通じて会社の状況を把握し、経営上の課題や今後について労働組合として考えを持ち、労使での議論につなげていくことが経営対策の基本となります。

 
 

2.経営対策の幅を広げる「価値共創」という考え方

 

会社の状況を把握・分析し、必要な要求や提言を行うことは、経営対策の重要な役割です。

しかし、それだけでは具体的な変化につながりにくいこともあります。

 

例えば、財務分析をもとに「適正な労働分配率は○%だから、その水準まで組合員に還元してほしい」と求めても、最終的な判断は会社側に委ねられます。

 

そこで、会社の課題を把握し、改善を求める従来の経営対策に加えて、「より良い会社・職場をつくるために、労働組合には何ができるか」という視点へ取り組みの幅を広げていくことが、これからの経営対策につながります。

 

2-1.利益の「分配」だけでなく、企業が生み出す価値を高める

会社が「生み出した利益をどのように組合員へ還元しているか」は、労働組合が注視すべき重要なテーマです。

 

一方で、利益の分配だけでなく、会社とともに企業が生み出す価値そのものを高めていくという視点もあります。

つまり、限られた「パイ」をどう分けるかだけでなく、「パイそのものを大きくする」という発想です。

 

企業が持続的に成長し、その成果が賃金や雇用、働きやすさなどを通じて組合員へ還元される。

こうした好循環を目指し、労働組合もより良い会社・職場づくりに関わっていくことができます。

 

このように、会社と労働組合がそれぞれの立場や強みを活かしながら、より良い会社・職場をともにつくっていくのが、「価値共創型」の経営対策です。

 

2-2.「人」に働きかける、労働組合ならではの経営対策

企業が持続的に成長し、より大きな価値を生み出していくためには、事業や財務だけでなく、そこで働く人の力を引き出していくことも重要です。

 

近年注目されている「人的資本経営」でも、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげていくという考え方が示されています。

 

そして、「人」は労働組合が強みを活かして働きかけることができる領域でもあります。

 

労働組合には、職場集会や日々の組合活動などを通じて組合員同士をつなぎ、対話を生み出す「対話のプラットフォーム」としての役割があります。また、組合員の声や職場の実態を把握しやすいことも、労働組合ならではの強みです。

 

こうした強みを活かし、組合員が力を発揮できる環境や関係づくり、一人ひとりの成長などに働きかけることは、人的資本の価値を引き出し、企業が生み出す価値を高めることにもつながります。

 

会社に改善を求めるだけでなく、働組合自身が「人」に働きかけることも、価値共創型の経営対策の一つです。

 
 

3.価値共創型の経営対策につながる3つの具体策

 

価値共創型の経営対策として、労働組合からできることはさまざまです。

ここでは、労働組合の強みを活かした3つの具体的な取り組みを紹介します。

 

3-1.心理的安全性を高め、率直に話せる関係をつくる

一つ目は、心理的安全性を高め、組合員同士が安心して意見を交わせる関係をつくることです。

 

労働組合には、職場集会や代議員会、日々の対話活動など、組合員同士が話し合う機会があります。

こうした機会を、情報を伝えたり意見を集めたりするだけの場ではなく、組合員同士が互いの考えを知り、意見を交わす「対話の場」として活用していくことが考えられます。

 

例えば、少人数での意見交換を取り入れたり、ファシリテーションを工夫したりすることで、さまざまな立場の人が意見を出しやすくなり、相互理解を深めることにつながります。

 

こうした対話を重ねることで、組合員同士の関係が深まり、職場の課題について一緒に考えたり、新しいアイデアを生み出したりする土台にもなります。

さらに、そこで生まれた意見や考えを労使の対話につなげることで、会社とともに職場や組織の課題に向き合うことにもつながります。

 
 

3-2.働きがいや幸福感を高め、ワーク・エンゲージメントにつなげる

二つ目は、組合員の働きがいや幸福感を高め、ワーク・エンゲージメントにつなげていくことです。

 

組合員への還元というと、賃金などの経済的な報酬に目が向きがちです。

一方で、仕事へのやりがいや幸福感など、働く人の心の面から働きかけていくことも大切です。

 

その第一歩として、労働組合が独自にエンゲージメントサーベイを実施し、組合員の働きがいや会社・仕事に対する意識を把握する方法があります。

会社が実施する調査では、人事評価などへの影響を気にして、本音を回答しにくい場合もあります。

労働組合が主体となることで、組合員がより率直に回答しやすくなることも期待できます。

 

結果を労使で共有し、見えてきた課題について話し合うことで、具体的な職場・組織の改善につなげていきます。

 

実際に、ある労働組合では、サーベイと組合主導の対話から、業務の属人化によって若手が成長機会や責任ある仕事を得にくいという課題が見えてきました。

そこで、若手への業務マニュアル改訂の委任や、ベテランの育成役割を評価シートに反映するなどの改善を労使で実施。

若手の成長実感が高まり、エンゲージメントの向上や離職率の低下につながりました。

 

こうして働く人の心の面にも目を向け、労使で改善に取り組むことも、企業が生み出す価値を高めていくための経営対策の一つです。

 

3-3.組合員の自律的な成長を支援する

三つ目は、組合員一人ひとりの自律的な成長を支援することです。

組合員一人ひとりが、自らの力を高め、仕事を通じてより良い価値を生み出していくことは、本人の成長だけでなく、企業が生み出す価値を高めることにもつながります。

 

こうした組合員の成長に対して、労働組合から働きかけることもできます。

 

例えば、「被考課者教育」です。

評価を受ける側の組合員が、人事評価制度の目的や仕組みを理解し、自分自身の目標やキャリアについて考えることで、人事評価を単なる「査定」ではなく、自身の成長につなげる機会として活用できるよう支援します。

こうした組合員一人ひとりの成長を支援することも、「人」に働きかける価値共創型の経営対策の一つです。

 
 
 

4.労使でより良い会社・職場をつくる経営対策へ

 

会社の経営状況を把握・分析し、経営上の課題を捉え、必要な要求や提言につなげていく。こうした経営対策は、組合員の雇用や労働条件を守るために、これからも重要です。

 

そのうえで、より良い会社・職場をつくるために、労働組合には何ができるか」という視点まで経営対策の幅を広げていくことが、これからの経営対策につながります。

 

人的資本が重視される中、働く人が力を発揮できる組織をつくることは、企業の持続的な成長を考えるうえでも重要なテーマです。

そして、人や職場に働きかけることは、労働組合が強みを発揮できる領域でもあります。

労働組合がその強みを活かして組織の活性化に関わり、会社とともに企業が生み出す価値を高めていく。こうした役割を労働組合自身が担っていくことが、「価値共創型」の経営対策です。

 

企業が持続的に成長し、その成果が組合員の雇用や労働条件、働きやすさへと還元される。労働組合がより良い会社・職場づくりに主体的に関わることは、こうした好循環を生み出し、組合員が安心して働き続けられる職場をつくることにつながります。

 
 

労働組合の経営対策を支援します

 

j.unionでは、経営分析に必要な知識を学ぶセミナーをはじめ、組合員の意識や組織の状態を把握するための調査・診断、職場での対話を促す取り組み、組合員の成長を支援する教育など、労働組合の経営対策を幅広く支援しています。

 

「経営対策をこの先どう進めていけばいいか悩んでいる」

「会社への要求や提言だけでなく、より良い会社・職場をつくるために組合としてできることを考えたい」

このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

 
 
 

関連記事