語りつぐもの #27「誤解多いユニオンショップ協定」

2026.04.21 

※本コラムは、2025年9月21日に当社が運営するnoteに掲載された記事です。

 

このコラムは、元連合副会長・元JCM議長(現顧問)・元電機連合委員長(現名誉顧問)である鈴木勝利顧問が、今の労働組合、組合役員、組合員に対して本当に伝えたいことを書き綴るものです。

 

 

日本では当たり前と考えられてきた労働組合組織のあり方も、見方を変えれば不思議なことも多い。その最たるものがユニオンショップ協定である。

 

今さら言うまでもないが、ユニオンショップ協定は労使双方が話し合いを経て納得づくの内容で協定したものだが、それでも誤解を生む内容もある。

 

一例をあげればユニオンショップ協定の典型的な表現、企業において「従業員は組合員でなければならない。組合員は従業員でなければならない」というのも、文章をそのまま解釈すれば「組合員と従業員は表裏一体だから、組合員でなくなれば従業員でもなくなることになる」。つまり、組合が独自の判断をして、ある人物を組合員として認めなかった場合、従業員の籍も失うことになってしまう。即失業の状態に追いやられることを意味する。それを避ける為には組合員の資格を失わないために、不本意ながら組合の方針に従わなければならない。組合役員の判断が優先され、その結果社員の資格を失う憂き目にあってしまう。組合という組織が、組合員という一人の人間の人生を左右してしまうのだ。

 

組合の組織論が個々の組合員の人としての生きざまを否定してしまう。そんなことが許されるはずはないのだ。

 

しかし同時に、団結を旨とする労働組合の中で、決められたことを否定し、自分勝手な行為が許されるなら、組合という組織そのものも否定されてしまう。それもおかしな話だ。

 

この二つの矛盾した考えをどのように調和させるのかが重要になる。

 

また、アメリカが採用しているオープンショップという方式もあるが、これは、一事業場において過半数の従業員が組織されなければ労働組合の結成は認められない。その一方で唯一交渉権が保障されているので、結成された組合にしか会社との交渉は認められない。だから、他に組合を作っても会社とは交渉できないから、企業内には複数組合が組織されない。

 

同時にユニオンショップ協定は禁止されている。これはユニオンショップ協定の禁止はあくまで個人の意思(組合に加入する、しないの意思)を尊重することによるものと思われるが、一方で唯一交渉権を保障することによって組織的混乱を回避しているといえる。

 

日本でも戦後の昭和25年の新労働組合法の制定に当たってこの問題が法律学者を中心に議論されたが、ユニオンショップと唯一交渉権の両方を保障した場合、その時々のリーダーの思想によって組合員の自由意思が無視されることや、労使関係が破綻することが眼に見えていたので唯一交渉権は見送られたと推測されている。

 

もともと雇われる側の労働者一人の力と、雇う側の経営側とでは、その力関係は圧倒的に後者の方が有利になっている。そのために、入社した後は労働組合などの集団の力で双方の力関係を対等になるよう保障しているのである。

 

今では当たり前と考えられている労使対等の姿は、内実はさまざまな問題を抱えている。組合のリーダーが油断したらいつ保障されなくなるかわからない危うい面も持っているのだ。たとえば、法律(労働組合法)で組合の存在が保障されていても、組合を毛嫌いする経営者もいまだ多い。

 

一つが、黄犬(おうけん)契約の禁止である。

 

なぜ黄犬という言葉が充てられているのかよく分からないが、欧米や中国語圏などでは御用組合を黄色組合と呼ぶことからきているのだろう。経営者との対立を不可避と考えるマルクス主義者からみて、否定的に、蔑視的に使われているのだ。

 

労働組合法では「使用者が労働者に対して労働組合の組合員たることの故をもって解雇その他の不利益取扱いをなすこと、および労働組合に加入しないことまたはそれを脱退することを雇用条件とすること」を禁止しているのは、組合を毛嫌いする経営者がいても、労働組合の存在が、近代民主主義社会において欠くべからざる条件になっているからである。

 

労働者が自主的に労働することを妨害されない権利、労働組合を作り、加入する(加入を強制されない)権利、雇用者と団体交渉を行う権利、合法的に争議を行う権利など、労働者がその労働に関して持つ権利である労働基本権を認められるのが、近代社会といわれるための最低限の条件なのである。だから諸外国でこれらが認められていない国は、近代社会とは言えないのである。

 
 

この記事を書いた人

 

鈴木 勝利

Suzuki Katsutoshi


元連合副会長・元JCM議長(現顧問)
元電気連合委員長(現名誉顧問)
2012年春の叙勲において旭日重光章を受章。

鈴木勝利 顧問