語りつぐもの #28「人口減少と女性労働力・高齢者労働力・外国人労働力」

2026.04.23 

※本コラムは、2025年10月21日に当社が運営するnoteに掲載された記事です。

 

このコラムは、元連合副会長・元JCM議長(現顧問)・元電機連合委員長(現名誉顧問)である鈴木勝利顧問が、今の労働組合、組合役員、組合員に対して本当に伝えたいことを書き綴るものです。

 

 

この世に社会がある限りその根幹には「労働」がある。社会と労働とは切っても切り離せない強く太い繋がりがある。そして労働を考えた時、それを支えてきた労働力も大きく変化してきた。

 

女性が働くことが稀(まれ)の時代もあったし、幼児が強制労働に苛(さいな)まれた時代もあった。

 

人口動向についてはさまざまな資料があるが、労働力に限って総務省・統計局の資料を分析しても特徴的な傾向が見て取れる。

 

例えば、労働力人口といわれる数字でも、働いている人(就業者)と、働く意思はあるが職業安定所を通じて求職活動をしている失業者の人(完全失業者)との合計数は、2024年平均は6957万人、前年に比べ32万人の増加を記録しているが、男性の1万人の減少に対し、女性は33万人の増加となっている。

 

さらに15歳~64歳という労働力人口で見てみると全体で16万人も増えているが男性は4万人の減少、これに対し女性は21万人も増加している。

 

女性の仕事に短時間労働が多い傾向があったにしても、女性の社会進出が進んでいることが分かる。

 

また正規社員、非正規社員別とで比べてみると、正規の職員・従業員は39万人の増加、非正規の職員・従業員は2万人と増えている。一時期、正規より非正規の労働者が増えているといわれていたが、今は正規社員の方が増えているので、人手不足による労働者の売り手市場であることが分かる。

 

なお、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は36.8%と0.2ポイントの低 下となった。

 

このように景気の良(よ)し悪(あ)しによって正規・非正規の雇用状況は影響される。景気が悪ければ正規より非正規の方が増加するのだ。

 

時代によって雇用状況が大きく変わるのは今も昔も変わらないが、それらを産業別にみてみると、時代の変化がより分かる。

 

就業者が最も増加した産業は「情報通信業」で14万人の増加で、つぎの「医療,福祉」産業は922万人と12万人の増加、3位は「宿泊業,飲食サービス業」の407万人と9万人の増加などとなっている。

 

また、「製造業」は1046万人と9万人の減少、「農業,林業」は180万人と7万人の減少、 「建設業」は477万人と6万人の減少などとなった。

 

さらに就業状況を地域別にみてみると、11地域中8地域(北海道、東北、南関東、北関東・甲信、近畿、中国、九州 及び沖縄)で前年に比べ増加している中で、3地域(北陸、東海及び四国)が減少している。

 

とくに、南関東で23万人の増加、近畿で7万人の増加となっている。

 

就業状況を顕著に表す完全失業率は、11地域中6地域(北海道、北関東・甲信、北陸、近畿、四国及び沖縄)が前年に比べて低下し、3地域(南関東、東海及び九州)が前年と同率、2地域(東北及び中国) で上昇となった。

 

地域別の完全失業率は、北陸が2.0%と最も低く、次いで東海が2.1%、中国及び四国が2.2% などとなっている。その一方で、沖縄が3.2%と最も高く、次いで東北及び近畿が2.8%、南関東が2.7% などとなっている。

 

近年、日本の人口が減少(2010年12,806万人から2110年4,286万人に)していく中で、当然のことだが、生産年齢人口(15歳~64歳)も減少。その中で高齢化率は2110年までは増加し続ける(2010年が23%、2110年には41.3%と想定されている)。

 

人口の移動も地方圏から都市圏へと激しく移動し、所得格差はますます拡大すると見込まれている。

 

一般論として女性の人口動向は、人口の再生産に大きな影響を与える。いいかえれば女性人口の減少が激しい地域は、総人口も減少するから行政機能は成り立たなくなり市町村は消滅するとさえ言われる。

 

2010年から2040年にかけて若年女性が5割以上減少する市町村は、全国で373自治体(そのうち1万人未満は243自治体)に上る。

 

今の人口移動が止まらないと仮定すると、若年女性が5割以下に減少する自治体は、896自治体に上る。

 

若年女性が半分以下になる自治体は、秋田県で90%後半、青森県・岩手県・島根県で80%台、70%台が北海道・山形県・和歌山県・徳島県、60%台は奈良県・鳥取県・愛媛県・高知県・長崎県・大分県・鹿児島県。

 

その一方で、東京圏(特に近郊市)の高齢化が急速に進んでいく(千葉県西部、埼玉県中央部・同東部、神奈川県北部は2010年から2040年にかけて75歳以上の人口が100%以上増加する)。

 

いろいろと数字を並べてみたが、これらの傾向から今後の労働者の在り方を見通していくとすれば、それは、高齢者の能力をどのように生かしていくのか、いかに女性労働力を活用していくのか、外国人労働力をどのように考えていくのか、などの対応を図らなければならないことを意味している。これらのことに対応ができない企業は存続さえ危ぶまれるであろう。

 

今後は間違いなく外国人労働者が増えていく。日常の生活の中で外国人が多くなれば、チョットしたことで摩擦や差別が起きやすくなる。政治の中でも、「日本人、日本人」をことさら強調する傾向も見え始めている。それが行き過ぎれば外国人差別に進んでいく。何か危ういものを感じざるを得ないのだ。

 

社会全体が、若年者・壮年者・高齢者、女性、外国人を差別なく、日本にとってかけがえのない存在として評価し、職場の隣で働く同僚としてともに働き、ともに暮らしていくことが当たり前のこととして受け止めていけるか、それが問われる時代が来ているのである。

 
 

この記事を書いた人

 

鈴木 勝利

Suzuki Katsutoshi


元連合副会長・元JCM議長(現顧問)
元電気連合委員長(現名誉顧問)
2012年春の叙勲において旭日重光章を受章。

鈴木勝利 顧問