語りつぐもの #29「あなたはムヒカ元大統領から何を学びますか」

2026.04.28 

※本コラムは、2025年11月21日に当社が運営するnoteに掲載された記事です。

 

このコラムは、元連合副会長・元JCM議長(現顧問)・元電機連合委員長(現名誉顧問)である鈴木勝利顧問が、今の労働組合、組合役員、組合員に対して本当に伝えたいことを書き綴るものです。

 

 

2016年、来日した南米ウルグアイのムヒカ大統領を取り上げた番組が連日放映されていた。

 

そして9年後の2025年10月下旬、日本では自民党の総裁選びの模様が連日テレビで放映された。

 

これからの日本を導いていくはずの自民党総裁はどうあるべきなのか。国民も一人一人が、あの人がいい、この人がいいと自分に問いかけたり、激論を交わしたり、さまざまな受け止め方をしていたようである。

 

かたや日本のトップリーダーの選出、かたや南米ウルグアイの元大統領の人生、両者を比較すると改めてリーダーの在り方に関心が向いていく。

 

ムヒカ大統領は1935年生まれ、7歳で父親を亡くし、少年時代には小さな土地で育てた花を売って家族の生計を立てていた。ウルグアイの抑圧的な政治体制が続く中、1960年代初め大学を卒業すると反体制の革命組織に加わるが、軍事政権下のゲリラ活動で4度も逮捕されてしまう。このため獄中生活は13年間に及び、ようやく1985年に軍事政権から民政化がはかられ、ムヒカ氏も武装闘争から民主的な活動へと変わっていく。

 

これらの経験から彼は、暴力では真の変革は実現できないということや、人間の尊厳は物質的な豊かさとは無関係であること、真の自由とは精神的な解放であること、忍耐と希望の重要性を認識したという。

 

ムヒカ大統領の政策は特異なもので、麻薬関係者の収入を絶つためにマリファナや大麻を合法化した。また南米で初めて2012年に中絶を認める国になった。また2013年には同性婚を合法化するなど、進歩的な社会政策を次々と実現させている。

 

経済政策でも失業率を低く維持しながらGDPの成長を達成、優れた実績を残している。

 

世界中の多くの国のリーダーに見られる公人と私人の言葉と行動の落差とは違い、同氏は完全に一致していて、このことが真に偉大なリーダーとして評価されている要因となっている。

 

その代表的なものが生活スタイルで、大統領報酬の87%を慈善事業に寄付、公邸での生活を拒否し質素な農場で暮らし、友人からもらった古い小型車を使うなど、質素を絵にかいたような生活をしている。

 

2012年のリオ会議(地球サミット)での名スピーチにより、ムヒカ大統領は「世界一貧しい大統領のスピーチ」として評価された。

 

2020年10月、健康上の理由から政界を引退、その後も世界各地から講演やインタビューの依頼が絶えないという。日本でも立命館大学国際平和ミュージアムでの企画展示「世界一貧しい元大統領から学ぶ”本当の豊かさ”」が開催されるなど、その思想と生き方が継続的に研究・紹介されている。

 

では同大統領のどこが私たちに教訓を与えてくれているのか。それは現代社会の根本的な課題を指摘し、その解決への道筋を示しているからといわれる。いくつかの例をあげてみよう。

 

一つに、「発展は幸福のためになされるべき」という考えが、現代の最大の課題である「持続可能な発展目標(SDGs)」の精神そのものであること。

 

一つに、物質的豊かさが一定レベルに達した先進国において、心の健康や精神的な充実が重要な課題となっているが、この問題への一つの解答を示していること。

 

一つに、これは労働組合の指導者にも当てはまるもので、権威主義的なリーダーシップではなく、「奉仕型リーダーシップ」の重要性を指摘していることである。

 

それらを表している名言といわれる言葉を拾い出してみよう。

 
  • ・貧乏とは欲が多すぎて満足できない人のことです。
  • ・発展は幸福を妨げるものであってはいけないのです。
  • ・私は貧乏ではない、質素なだけです。
  • ・世界を変えられるわけではありませんが、あなた自身は変わることができるんですよ。
  • ・物を買うというのは、稼いだ金で買っているのではなく、労働をした時間で買っているのだ。
  • ・自分にとっての幸せを探してく下さい。
  • ・人生で最も重要なことは勝つことではありません。歩み続けることです。
  • ・消費すると時間を失う。
  • ・本当に日本人は幸せなのか?
  • ・産業社会に振り回されている。
  • ・政治とはすべての人の幸福を求める闘いなのです。
  • ・私たちは発展するために生まれてきたわけではない、幸せになるために地球に生まれてきたのだ。
  • ・我々はあの世に何も持っていけない。後世に教育を残すのです。
  • ・本当のリーダーとは、多くのことを成し遂げる者ではなく、自分を遥かに超えるような人材を育てる者。
  • ・貧しい人というのは、ものをもっていない人のことではない。真に貧しい人というのは、際限なくものを欲しがり永遠に満たされない人のことである。
  • ・日本にいる子供たちよ。君たちは今人生で最も幸せな時間にいる。経済的に価値のある人材となるための勉強ばかりして、早く大人になろうと急がないで。遊んで、遊んで、子供でいる幸せを味わっておくれ。
  • ・国を治めるものの生活レベルはその国の平均でなければならない。
  • ・本当に貧しい人は、贅沢な暮らしを保つためだけに働く人であり、そして常に何でも欲しがる。もっと!もっと!と。
  • ・西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?可能ですか?
  • ・金持ちは政治家になってはいけない。
 

ムヒカ大統領の言葉、さて皆さんはどのように感じましたか。そして日本の政治家はどう生かしているのでしょうか。

 
 

この記事を書いた人

 

鈴木 勝利

Suzuki Katsutoshi


元連合副会長・元JCM議長(現顧問)
元電気連合委員長(現名誉顧問)
2012年春の叙勲において旭日重光章を受章。

鈴木勝利 顧問