中外製薬工業労働組合

組合員の悩みや本音が聴ける相談役機能向上~「問題解決」ではなく「理解」しよう~ リスニング(傾聴)研修を実施

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[ ① 導入前の課題 ]
中外製薬工業労働組合の課題が組合員意識調査で明らかに

中外製薬工業労働組合は、「一人ひとりが『最高の会社でした』と言える会社にしたい」を組合ビジョンに掲げ、それにひもづけた風土・制度・人財育成の各ビジョンを策定し、活動することで、組合ビジョンの達成を目指しています。職場集会で「組合ビジョンが達成できている職場とは」をテーマにグループ討議を行ったところ、多くあがったのは「相談や意見がしやすい職場」「フォローし合える職場」といった声でした。
弊組合が4年に1度実施する組合員意識調査の回答を見ると、組合役員の手腕や活動には定評があるにもかかわらず、「仕事や生活について組合に相談しますか」という質問には、「そう思う」5.0%、「ややそう思う」12.6%、「どちらともいえない」25.2%、「あまりそう思わない」27.3%、「そう思わない」29.9%という結果でした。自律的な活動、特に職場問題の把握、苦情処理などの働きがいを高めるための自浄機能が弱い。つまり相談役としての機能を果たせていなかったのです。この課題を解決するために、執行委員全員がまずは「聴く技術」を磨いてもらうほかない、そのための研修を実施しようと考えるに至りました。

[ ② 導入の目的 ]
相談役としてのスキル習得のためのリスニング(傾聴)研修を実施

リスニングのメリットは、話し手(組合員)、聴き手(執行委員)の双方にあります。
聴き手にとっては、相手への理解が深まり、どういうことで悩んでいるのか、事実は何なのかが明らかになることで信頼関係が深まってアドバイスしやすくなり、人間関係がよくなります。またリスニングスキルを使って聴くと、話し手側は、「自分ってこんなことを思っていたんだ」「こんなふうに考えていたんだな」など、自己理解が深まっていきます。そして聴いてもらったことで承認欲求が満たされ、状況や考えが整理でき、自分で問題解決していけるようになります。
リスニングは、コーチングやカウンセリングの入り口になる基本技法の一つです。組合役員が習得し、そのメリットを得ることで、①「組合相談機能の強化」につながります。そしてリスニングスキル習得者の数が増え、リスニング活動が職場で定着してくると②「相談・意見がしやすい職場」が実現します。</p3

[ ③ j.unionに決めたポイント ]
実践型の研修でPDCAサイクルを回すことを協働できることが決め手でした

このようなスキル研修において座学で講義を受けるだけでは、行動が定着することは難しいと思っています。研修として一連の流れの中で職場実践して振り返るところまでを実施いただけることが決めてでした。また、ロールプレイングで練習する際には、スキルを持ったアシスタントが一定数必要です。その点においてもしっかりと対応頂けることも決め手の一つでした。

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[ ④ 導入の効果 ]
執行委員に、自主性・積極性が芽生え始め、要員計画や人財育成に関する提言にも結びついています

研修後、まず変化したのは執行委員の行動です。残業が多く、メンタル不全や離職が懸念されていた職場へのリスニングを執行委員が提案。組合が会社と交渉し、就業時間内に、その職場の約40人の従業員全員にリスニングを行い、会社側に報告資料を提供したところ、工場長は驚きを隠せない様子でした。その職場は、弊社の今後10年、20年を支えていく重要な新製品開発製造部門。そのため工場長はみんなのモチベーションは高いと思い込んでいました。ところが実際は疲弊し、まるで意欲を失っていたのです。執行委員による個別相談の内容が質、量ともに充実していたため、看過できない情報が明確化したということです。
会社にも、法律改正や他社動向などとは違った、組合員ベースの意見による労働条件の提案ができるようになりましたし、マネジャーとの職場環境に関する対話の機会も増加しました。
その結果は、要員計画や人財育成に関する提言にも結びついています。先ほどの部門は人員計画の見直しを行い、今後、増員をする予定でいます。会社からは組合が話を聴いてくれたおかげだと言われています。
また、同時に組合員からの信頼も獲得することができました。多かったのは「話を聴いてもらっただけで、すっきりした。ありがとう」という声でした。
ただ職場リスニング活動を知らない組合員も、まだ少なからずいます。いかにミドルマネジャークラスにリスニング活動を理解してもらい、一緒に課題解決につなげていくかも今後の課題です。
リスニングによる相談役機能が向上すれば、情報の量と質が充実し、組合員との信頼関係はより強くなり、新たな視点や気づきが執行委員に生まれます。また信頼関係のある仲間のためだとみんな自律的に行動します。すると新しい企画の検討や、会社に対する提言も充実し、労働条件の改定、職場環境の改善、組合員の活動参画の増加など、良いサイクルが生まれます。そのスタートがこの一年だったといえます。組合ビジョンの実現のためにも、毎年、新任執行委員を対象としたリスニング研修を実施していく計画です。

★実際にリスニング活動を行った支部長インタビューはこちらからご覧ください。
『j.unionジャーナル』のPDFデータが開きます。

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担当者より一言

「組合の相談機能の低下」は、私が懸念している課題のひとつです。また日本もダイバーシティ化が進み、リーダーの傾聴力は今後ますます必要とされます。ですが、傾聴というのは単純そうにみえて奥が深く、簡単そうに見えて多くの人が初めての経験に戸惑います。私どもの「リスナー養成プログラム」は、実践を大事にしているため、少人数制で研修時間は2日間と少々ハードルが高い内容です。そのため開催に躊躇する組合さんも多いのですが、久保島委員長はご自身もキャリアカウンセラーとして勉強した経験があるため、その必要性を理解していただき、十分な時間とアシスタントの採用を決断していただきました。当日は二日にわたり、小グループでみっちりとロープレを実施。受講者は相当疲れたのではないかと思います。その甲斐あって、リスニング活動1年目から成果が出て嬉しく思っています。今後も情緒支援認知の高い職場作りのご支援をさせていただきたいと思っています【中岡祐子】